、自然に精神統一や、長時間の注意力の持続ができなくなって、いろいろと妙なことになるのである。だから、私にとって、十二月、一月、二月ごろが年々最悪の期間で、仕事もはかどらないし、甚しく浮浪性が頭をもたげ、気まぐれで短気になって、我ながら手に負えない自分を感じだすのである。
いかにして無事一定量のアルコールを胃袋におさめるか、ということは私の日々の一大念願である。欲する時に酔って眠れればよろしいのだ。ところが酒の味が鼻についてイヤでたまらないから、いつも酒の品目を変えて鼻につかない工夫をしてもダメ。ついには酒席を変え、方々へとびだしてのむ。すると時には案外気持よく酔うこともあるし、益々酔えないこともあるし、とにかく外でのむとムリをするから、胃弱を急速にひどくして、朝食べた物が十二時間経過した夜分になってもソックリ胃の中にあり、吐くとそのまま出てくる。しかも尚のむのである。これでも、酒で眠れればよろしいのだ。酒というものは、催眠薬にくらべれば、どれくらい健康だか分らない。
私の場合はアンタブスを飲まずに、常に同じ薬効を経験しつつあるようなものだ。私にとって必要なのはアンタブスの逆のもの、
前へ
次へ
全17ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング