をひらく、そして鼻汁が落ちようとすると、猛然として吐きあげてしまうのである。というのも、決してそうだと言いきれるワケではない。私の吐くに至る筋道がどうもそう感じられるという程度のバクゼンたるものではあるが。
 アンタブスが体内でアルコールと結合するとアセトアルデヒドという酒を嫌いにさせる作用のあるものが蓄積され、新陳代謝を阻害して、顔が真ッ赤になり、汗が流れ、一滴も酒をうけつけられなくなるのだそうだ。
 すると、私の場合、胃が重かったり、鼻汁が流れこんだりすると、自然に体内にアセトアルデヒドを蓄積するような体質でもあろうか。私はこの鼻汁が実に苦手で、神経科の先生にも何度も訴え、その先生は耳鼻科の専門医に診せて下さったが、どうしても、なんでもないとの診断である。しかし、私の友人で、私と同じように鼻汁のために酒をのむと吐き気に悩みつつある人を現に二三知っているから、私はこの鼻汁は実に曲者だという考えをどうしても忘れられないのだが、どなたか耳鼻科の専門医で、こういう経験をお持ちの方はいないものかナ。
 この鼻汁は、私にとっては万病の原因である。なぜなら、酒がのめなくなると、睡眠がとれなくなり
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