用後酒をのんだ時の状態なのである。
私がこうなる時は、空腹でない時にのむ場合とか、宿酔《ふつかよい》のあととか、であるが、然し、季節的に考えて、鼻汁のでるころ、つまり冬、それがいけない。私は冬中鼻カゼをひき通しであるし、時には一年中その状態のこともある。この鼻汁がノドにはいると、いけない。意識しなければよいけれども、意識すると、もうダメだ。ムカムカと吐き気を催しはじめる。鼻カタルをフランスでは脳カタルと云うそうだが、私には、どうもその言葉の方が適切だ。
週刊朝日のその号に、高野六郎博士が、自身用いている宿酔しない方法というのを説いておられる。水をガブ/\のんで歯をみがくと、歯ミガキ粉が少し自然にノドへはいって、それがシゲキとなって胃の中のものを全部はきだす、という方法である。その道の学者がこういう原始的方法を愛用されているから私もおかしかったというのは、私自身が期せずしてこの方法を用いていたからである。私の場合、方法は同じだけれども、吐く原理の解釈が高野博士とちがっていた。私のは、歯ミガキ粉のシゲキじゃなくて、大口をあけて歯をみがくと、その顔面の運動が、鼻汁が胃へ自然に落ちて行く道
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