せよ、大切なお客様に恥をかかせやしませんとも」
「ウーム。ホントか」
 安福軒は散々アジッておいて、泥酔を見すまして姿を消した。あとは老婆が安福軒のムネをうけて宜しきようにはからい、酩酊した大巻博士は女主人と一夜のチギリを結んでしまったのである。
 翌朝、女が沈んだ顔をしているから、
「気分でも悪いかね」
「いいえ。先生。お願いです。私を東京へ連れてって下さい。先生の二号にして下さい」
「いきなり、そんな」
「だって二号にしていただかないと、生きる瀬がないんです。主人がそうしろッて云うんですもの」
「主人とは?」
「昨夜《ゆうべ》の男です。私はあの人の二号です」
「安福軒があなたの旦那か!」
「そうなんです。お客さんを連れてくるたび、あの方の二号にしていただけと脅迫するんです。今までの恩返しに多くのことはするに及ばないが、応分の手切れ金をいただいてそれを置いて出て行けと云うんです。どなたかの二号にしていただかないと、もう我慢ができません」
 女は思いつめたせいか益々無表情になりヨヨと泣き伏してしまった。
 安福軒とはそんな奴かと気がつくと、せっかくの気分を損うこと甚大だ。女も気の毒では
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