がる」
「なに云ってますか。水ゴリまでとってアクセクかせぐことはないですよ。教祖管長その他に奮闘努力してもらって、ちょッと手を合せて拝むだけで然るべきアブク銭にありつくことができる商売は悪くないですよ」
「君も教祖を持薬に用いているそうだが」
 大巻先生がこう川野にきくと、川野はもっともらしくうなずいて、
「頭痛、肩の凝り、フツカヨイなぞによく利くよ。教祖の指圧がよく利くのだが、出張してもらうわけにいかないから、弟子に来てもんでもらうが、アンマにくらべるとたしかによい。アズキを袋につめたものでゴシゴシやったり、一時に三人がかりでもんでみたり、頭や背中をゴムの棒で叩いたり、いろいろと工夫している。これは弟子のやり方だね。教祖はそんなことはしない。掌の霊力の放射で治す。手をジッとかざすと、そこが焼けるように熱くなるね。その手が背中に吸いついて放れないこともある。手が放れた時にはスーと軽くなるのだよ。イヤ、本当です。ボクは阿二羅教の宣伝なぞする必要はないから、自分の経験を云ってるだけだ。たしかに利きますよ。君もなんならやってもらいたまえ」
 安福軒が傍でニヤリと笑い、
「熱くなるって、どんな
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