風に?」
「火の近くへ寄ったぐらいジーッと熱くなるよ」
「十人のうち、三人ぐらい、そんなことを云うのが現れますよ。光が何本もスーッとさしこんだのが分ったという人も十人に一人は現れますね。光がスーッとさしこむ感じの方は、どうですか?」
「君は信者のフリをしてお金をもうけて、そして自分だけ利巧者のツモリでいるらしいが、本当に信心していくらかでも実効を得ている方がもっと利巧だということが分らないらしいな」
「あなたは実効を得てますか」
「アンマの代りに用いて実効を得てるよ」
「言い訳だね。アンマの代りというのが、ミミッチイですよ。アンマの代りぐらいだったら、他に実効を得る方法は少くないでしょう。宗教の実効はもっと全的なものでなくちゃア、ウソですな。ねえ、大巻先生。そうでしょう。川野先生はどこかでウソをついてますよ。あなたはたぶん、全然信心していないんだと思いますよ。ただ霊験があるように信じたがっているだけですよ」
 安福軒は自信にみちたフテブテしい目で遠慮なく川野を見つめた。
 大巻先生は自分がはじめて彼女の旅館へ案内されたときに、安福軒が終始このような自信にみちた目をしていたのを思いだして
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