の方へ足を向けて寝られませんよ」
「それじゃア結構じゃないか」
「ま、一応は結構ですな。しかし、日野クンは怖るべき商才の持主ですよ。あのキチガイ女がですな、彼の意のままに動くんですね。しかもです、神サマとして動くんですな。折あらばこの秘伝を会得したいと思っていますが、これは、あなた、天才でなくちゃアできませんや」
「君だって彼女を意のままに動かしてインバイをやらせていたじゃないか」
「あれは凡夫凡婦の遣り口ですよ。彼は彼女に神サマをやらせることができるのです。その神サマを動かして難病を治すこともできます。まったくですよ。カンタンに治っちまうのが、相当数いるんですな。川野先生も、それで一コロですよ」
「川野君の病気を治したのかい?」
「いえ、あの先生の長女の寝小便を治しまして、それから次女のテンカンを治しまして、それからこッち先生自身も阿二羅大夫人を持薬に用いているようですよ。まったく人間はバカ揃いですよ。あなたがメンドーがらずに彼女を精神病院へブチこんどいてくれれば、バカの数がいくらか減ってる筈なんですがね」
安福軒はイマイマしげに呟いた。むかしは悪事を働きながらもケツをまくった風情
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