ず、又、一字を少くすることが全体として考へる時、時間の節約となるかどうか、その実質から割りだすべきもの、私は語の歴史性といふやうなことは、専門家だけのこと、一般には無意味なことだと考へる。

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 以上、まことにザッパクにまくしたてたが、私の意見は、主旨として、新カナヅカイも漢字制限も大賛成であるといふこと、なぜならば、ムダな労力がなくなるからで、そして又、ムダな労力がなくなることは国語ばかりのことではなく学問全般に一貫して実施されなければならないことで、日本の古典、漢文の古典も一般の人々が現代語でねころんで味読しうるやうな様式、西欧の名著もあげて現代語に訳して、学生たちは言葉の解釈を習ふのでなく、物の実質を味得する要領で、その実質を学ぶことが学問だといふ、さういふ態度を確立しなければならない。
 学問といふものは事物の操作を簡単にし、人生を豊富にするために在るべきものです。僕は学者ぢやないから、学問ある人々からさうしてもらひたいものだ、と乞ひねがつてゐる次第なのである。



底本:「坂口安吾全集 05」筑摩書房
   1998(平成10)年6月20日初版第1刷
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