新らしき文学
坂口安吾
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その本質に就て
近年、新興芸術の名に於て幾多の文芸運動が試みられてきたが、徒らに皮相の新奇を追うほかに為すところを知らなかった。従来幾多の此の如き新(?)文学運動の完全な失敗は、「新らしさ」を誤らしめ、同時に文学を過らしめた。
*
私の考えによれば、芸術は反撥精神のあらわれであり、時代創造的な激しい意志によって為さるべきものであると思われるに拘らず、最近日本文学の新らしい傾向は、老人の趣味に一致することを最も純粋と見做し、最も無気力な、自慰的な人間探究に過った亢奮を感じている。不動のもの永遠のものは已に亡びている。われわれは変化の中に、発展の一過程の中に、反撥から創造へ向う人間を探究し創りつづけてゆかなければならない。
然し、日本文壇の此の過った新傾向は、実は常軌を逸した従来幾多の新芸術運動の浅薄きわまる新らしさが、人に新らしさの本質を疑わしめた罪による。
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昔アリストテレ
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