でなく、感銘でない。寧ろ完全に非文学的なものである。やがて政治の御用文学となるそれ[#「それ」に傍点]である。それはもはや文学でない。
そのものによる批判
芸術は反逆精神のあらわれであり、時代創造的な意志によって出発し、同時に意義をもつものであることを述べた。
芸術は常に観念を変形せしめる。常に新らたな観念に拠って出発する。
それ故、芸術の一作品は、他の作品に比較して批判さるべきものではない。古い観念に順って批判してはならない。芸術は常にそれ自身として批判されねばならぬ。
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一フランス人の言葉によれば、ラムプを批判するのに椅子の効用に順って批判するのは滑稽であると。このラムプは腰かけることができない。それ故このラムプは良いラムプでないと言うのは滑稽である。然し此の滑稽は、他の形に於て、我々の日常に極めて普通に横行している。ラムプは常にラムプ自身の効用に順って批判されねばならぬのである。
私は古い観念によって私の作品が判断されることを好まないばかりでなく、私の作品を、古い観念を固執する人々におしつけようとは決してしない。新らしい芸術は新らしい人々の
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