るといふハッキリした限界があるので、愛着にもその限定が内々働き、そして落付いてゐられるのではないか、と思はれたからである。なに、戦争の破壊を受けずに生き残ることができれば、もつと完全な女を探すまでだ。この不具な女体に逃げられるぐらゐ平気ぢやないかと思ふ。
 その不具な女体が不具ながら一つの魅力になりだしてゐる。野村は女の肢体を様々に動かしてむさぼることに憑かれはじめてゐたのである。
「そんなにしてはいやよ」
 彼は女の両腕を羽がひじめにして背の方へねぢあげた。情慾と憎しみが一つになり、そのやり方は狂暴であつた。
「痛、々、何をするのよ」
 女はもがかうとしても駄目だつた。そして突然ヒイーといふ悲鳴をだした。野村は更にその女の背を弓なりにくねらせ、女の首をガク/\ゆさぶつた。女は歯をくひしばつて苦悶した。そして、ウ、ウ、ウといふ呻きだけが、ゆさぶれる首からもれた。
 彼は女を突き放したり、ころがしたり、抱きすくめたりした。女は抵抗しなかつた。呻き、疲れ、もだえ、然し、むしろ満足してゐる様子でもあつた。けれども女の快感はやつぱりなかつた。そして情慾の果に、野村を見やる女の眼には憎しみがあつ
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