メンバーにはいる筈はありえないのである。
 老人のクリゴトというものは、いつもこういうものである。しかし現代に生きる観衆はハツラツと生命に溢れており、現実を観賞することが全てゞ、今日プロ野球が人気をさらっているのも、プロ野球に実力と生命がこもっているからであろう。
 何よりも、職業人としての心構えの確立がプロ野球を今日あらしめたのである。野球を天与の業として、嬉々と打ちこみ、つまらぬプレーを見せまいとして、ともかく全力をつくしている。
 昔はこうではなかった。いゝ大人が野球などやるもんじゃない、という思想が、プロ野球のプレーヤーにもあったのである。そして、いかにも面白くもなさそうに、観衆の声援に対して、アベコベに、自分はお前さんたちのオモチャじゃないんだ、というようなフテクサレタ態度を示したものである。不世出の大打者と云われた宮武がそうであった。そして練習もおろそかに、あたら天分をもちながら、もっぱら三振して、フテクサレていたものだ。現在の選手では、大映の大岡に、こういう職業蔑視の気風がほの見えるようである。
 話の真偽は知らないが、さる野球通の話によると、昨年、星野組の火の玉投手荒巻
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