に落ちて、――翌日の朝が訪れるのであつた。その事が、又私には、一つの堪え難い不愉快であつた。真昼時《まひるどき》の、静かな蔭に泌みた部屋に、汚ない服装《みなり》をした此の婦人が白痴のやうに空洞《カラッポ》な顔をして、グッタリ窓に凭れてゐる様を、私は稀に見ることがあつた。私は、斯様な惨めな様を見るにつけて、同情の気持には全くならずに、反抗の美徳といふことを、屈服の悪徳といふことを思ひ付き、この女を憎む気持になるのであつた。
扨て、第五に――
私は、さらに忌々しい騒音として、一つの悲鳴を書き洩らしてはならない。私は、その悲鳴を聞くにつけて、苛立ちのあまり激しい身悶えを感ずるにも拘らず、その悲鳴は常に私を対象として、私に救ひを求めるために発せられるがために、否応なく私は、悲鳴に向つて歩いて行かねばならなかつた、然し私は、それは決して悲鳴に応ずるためではなく、その悲鳴を寧ろ厳しく窘《たしな》めるために、唇を顫はせ乍ら、ムッとして歩き進んで行くのであつた。その悲鳴は、ある時は階下に、ある時は隣室に、(そして、恰かも私の平和を掻き乱すためにのみ――)湧き起るのであつた。
隣室では――田代笛六
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