石の思ひ
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)苛々《いらいら》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)酔態|淋漓《りんり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)LACLARTE[#「E」はアキュートアクセント付きE、1−9−32]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ガタ/\
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 私の父は私の十八の年(丁度東京の大地震の秋であつたが)に死んだのだから父と子との交渉が相当あつてもよい筈なのだが、何もない。私は十三人もある兄弟(尤も妾の子もある)の末男で下に妹が一人あるだけ父とは全く年齢が違ふ。だから私の友人達が子供と二十五か三十しか違はないので子供達と友達みたいに話をしてゐるのを見ると変な気がするので、私と父にはさういふ記憶が全くない。
 私の父は二三流ぐらゐの政治家で、つまり田舎政治家とでも称する人種で、十ぺんぐらゐ代議士に当選して地方の支部長といふやうなもの、中央ではあまり名前の知られて
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