の湖の姿で、私は私の心の退屈を仮の景色にうつしだして見つめているように思いつく。
「私の可愛いいオジイサン、サンタクロース」
私は久須美の白髪をいじりいたわりつつ、そういう。しかし、また、
「私の可愛いい子供、可愛いいアイスクリーム、可愛いいチッちゃな白い靴」
久須美は疲れてグッスリねむった。しかし五六時間で目がさめて、起きてぼんやり私の寝顔を眺めており、夜がしらじら明けると、雨戸をあけて、海を眺めている。私はしかし、どうしてこんなに眠ることができるのだろう。いつでも、いくらでも、私は殆ど無限に眠ることができるような気がした。ふと目をさます。久須美が起きて私をぼんやり見つめている。私は無意識に腕を差しだしてニッコリ笑う。久須美は呆れたように、しかし目をいくらか輝かせて、静かに一つ、うなずく。
「何を考えているの?」
彼は答える代りに、私の額や眼蓋のふちの汗をふいてくれたり、時には襟へ布団をかぶせてくれたり、ただ黙って私を見つめていたりした。
私がノブ子さん田代さんに迎えられエッちゃんと別れて温泉から帰ってきたとき、私は汽車の中で発熱して、東京へ戻ると数日寝ついてしまった。見舞い
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