生命拾ひをした話
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)烏鷺《うろ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)参考図一[#「参考図一」は太字]
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 朝日新聞の八段位獲得戦木谷七段対久保松六段の対局で呉七段の解説。参考図一[#「参考図一」は太字]で黒が手を抜いて「い[#「い」は太字]」と打たれても生きがあるといふのである。即ち参考図二[#「参考図二」は太字]白七[#「七」は太字]までゞ目を欠きにきても、次に黒ろ[#「ろ」は太字]と打つ手筋によつて黒に渡りがあるといふ。
 娯楽機関の何一つない田舎では、新聞を読むのが最大の娯楽である。僕はラヂオを聴かないが、毎日ラヂオを読むのである。活動写真も音楽も読むのである。料理も薬も読む。
 そのうちでも碁の欄は一日の退屈の時間だけ睨みつゞけてゐる。で、早速睨みはじめたが、渡りの手が見付からない。
 黒ろ[#「ろ」は太字]の時白は十一[#「は十一」は太字]黒ろ十二[#「ろ十二」は太字]白い十二[#「い十二」は太字]黒に十一[#「に十一」は太字]と切つて次に白に十三[#「に十三」は太字]と
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