うに手脚がスクスクのびていて、白く、なめらかであった。顔を見ると、三十五の年齢が分るけれども、白いなめらかなスクスクとのびたからだには年齢がない。幸吉は見あきなかった。
 いつまでも引きとめるわけに行かないので、幸吉も仕方なしに衣服をつけて、
「じゃア、なるべく早く式をあげよう。河岸の魚の値段がハネ上るほど盛大な催しをやろうじゃないか」
 キヨ子は返事をせず、靴下をはいていたが、
「今夜のこと、オバさんに話しちゃ、いやよ」
「いゝじゃないか。どうせ一緒になるんだから」
「見合いの日にそんなこと、おかしいから、言っちゃ、いや。そんな人、きらいだわ」
「そうか、わるかった。それじゃア、誰にも言いやしないよ」
 女を送って歩きながら、
「あすからでも、いゝや。式はあと廻しにして、すぐ来てくれてもいゝんだから。なんなら、二三日うちにだって、お祭みてえな式をあげるぐらい、わけのないことだから」
「結婚なんか、どうだって、いゝじゃないの。このまゝ、こうして、時々あうだけで、いゝじゃなくって」
 キヨ子の声は涼しいものだ。幸吉は耳を疑って、
「だって、お前、結婚した方が、お前のためにも、いゝじゃない
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