集団見合
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)憂《うれい》
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 あの日は何月何日だったか、その前夜、雑誌の用で、たしか岩田専太郎先生の小説を持ってきて、私にサシエをかけ、という難題をフッかけにきたサロンのチンピラ記者、高木青年が、ちょッと顔をあからめなどして、ボク、アスは社用によって見合いでして、朝十時、早いです、これからウチへかえってズボンをネドコの下へしいてネオシをして、エヘエヘとロレツのまわらないようなことを言いだした。
 ちょうどその時、私のウチへ遊びにきて一しょに晩メシを食っていたのが、これは去年の暮まではさる料理屋の亭主の奥さんで、今年の春はこれもどこかのチンピラ記者の奥さんに早変りをとげているという脳味噌が定量とかけはなれている女性が居合わして、
「アラ、高木さん、いゝわねえ、女を口説くのゥ。なんと云って口説くのゥ。モシモシッと云うのゥ。それから何て云うのゥ。遊びましょうよッて云うのゥ。アラ、はずかしい。キャーッ。私も行ってみたいわア。口説かれてみるのも、悪くないなア。あらア。キャーッ」
 女の人は、白札がヨメに行きたし、赤札が
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