ムコもらいたし。男は、白札がヨメもらいたし、赤札がムコに行きたし、だそうだから、じゃア、赤札をつけなさい、と私が入れ智恵したら、ボク、両方ぶらさげて行きます、エヘエヘと高木青年は答えた。
サロンには入江といって、これも脳味噌がよほど定量とかけはなれた人物がいて、これに集団見合出場の企劃が知れると、志願のあげく、亢奮、風雲をまき起す憂《うれい》があって、企劃をヒミツにしてあるそうだ。高木青年は編輯長のお見立てに気をよくして、なんとなく顔をあからめたり、モジモジしたり、エヘエヘと笑ったり、妖しい気分になっている様子であった。
集団見合の行われる多摩河原は私の家からちょうど散歩に手頃の距離だ。私は医者に散歩をすゝめられて、毎日そのへんまで散歩に行く習慣であった。
散歩と医者の件も、サロンに関係がある。ある日、升金局長が女の子に手紙を持たしてよこした。「アス御来社下さい。九州より上京の胃カイヨーの名医が、お風呂に入浴中シンサツします」気違いをお風呂に入れるということはきいてるけれど、入浴中、胃カイヨーのシンサツするというのは初耳で、それに私は銀座出版社の電気風呂は、電気死刑執行所みたいな
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