っぱりだしてきて、あゝしろ、こうしろ、ひねくり廻して撮影する。
それがすむと、ほかの社のカメラが、同じ美女をつれ去って、外の男と並べて、あゝしろ、こうしろ、撮影する。みんなそれをポカンと見物している。
それがすむと、又、別の社のカメラマンが同じ美女をつれ去って、男と並べて――要するに、ほかに美女がいないのである。
カメラマンの大活躍の陰の方に、ともかく見合いの仕事に従事して、東奔西走、なんとなくやっているのは、百名か二百名ぐらいのもの、その大多数は新聞社雑誌社の記者連中のニセモノどもである。ニセモノの花ヨメにも全然美女がいない。
高木青年が手をふって呼びかけた。漫画の富田英三氏と一しょである。高木青年は私の入智恵に従い赤札をつけていたが、
「ダメですよ。男も女も赤札が全然ないですよ。タマにいれば六十の婆さんですよ」
とウラミをのべた。
彼は出場券づきの雑誌を改めて買ってきて、白札をつけて、やたらに十人並の女の子に狙いをつけて東奔西走しはじめたが、それとは知らずニセモノ同志が[#「ニセモノ同志が」は底本では「ニセノモ同志が」]ハチ合せをしているにすぎないのである。
彼が女の
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