政治だと思ひ、政策、政策の実行、その信念、それを二の次にしてゐる。
棋士が将棋に殉ずる如く、政治家はわが政策に殉ずべきもの、千日手をさけて、わが道に殉ずる誠意を犠牲にし、敵と巧みに妥協して四畳半的にまとめあげて、それが手腕、風格、政治だなどと、これを日本的幽霊といふ。
日本の軍人は戦争の真の性格を知らず、戦争の勝利は、武器によること、武器の威力が戦争の威力であることを知らず、廻れ右前へ進め兵隊は教練に大半暮し鉄砲のタマを当てる技術に費す時間はいくらもなく、原子バクダンなど考へてもみない。戦争の始めから、勝つことぢやなしに、どこで巧く媾和《こうわ》するか、そんなことばかりを当にしてゐる。
すべて日本のかゝる哀れサンタンたる思想的貧困が、この戦争の敗北と共に敗れ去らねば、新しい日本は有り得ない。権威の否定とはさういふことで、日本を誤らしめてゐた諸々の日本的幽霊をその根本に於て退治することであり、木村名人は十年不敗の権威によつて否定されるのではなく、将棋に不誠実なること、将棋以外の風格によつて名人的であつたこと、架空の権威と化しつつあつたために、負けるべき性格にあつたのである。精神にた
前へ
次へ
全39ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング