男を思うようにあやつらせて、できることなら一思いに……」
甚兵衛は自分たちも手を下したからロケンしたが、万事神サマの神通力にまかせてしまえばロケンする筈がないと考えた。
こう考えてお加久をわが家へ招く気持になったのであるが、不二男の信心が警察をあざむく手段で、帰宅の途中まんまと平作もだしぬかれてズラかられてしまったから、平作は怒り心頭に発してお加久を咒ったのである。
けれども、また平作の心が変った。不二男にああいう悪い女や仲間がいては、いよいよ早々と不二男を片づけてしまう必要がある。平作の頭には小野の言葉がしみついていた。
「いまに血の雨が降らねばよいが……」
あの疑り深い刑事でも、ヒサのことでは血の雨が降りそうだと考えているのである。
「こいつは、利用できるぞ。ヒサのことで不二男が殺されたと見せかけさえすれば……」
新しい考えが平作の頭にうかんだのである。
平作はお加久と兵頭を馬小屋へ連れこんでワラの上へ坐らせた。平作はチョウチンをマンナカに立てて、二人をジッと見つめて、
「お加久はさすがに相当な行者と見えて、不二男についた死神とメス狐が見えるらしいな」
「見えるとも。憑
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