のドシャ降りに突き放すのも気の毒だから、今夜だけは馬小屋へ泊めてやろう。お前ら、表へでろ。ウチへ上りこもうなんて、ふとい奴らだ。お情けに今夜だけは馬小屋へ泊めてやるから、ワラをかぶって寝てろ」
 平作はお加久と兵頭を馬小屋へ連れこんだ。
 もともと平作がなぜお加久をわが家へ連れこむ気持になったかというと、不二男の性根を直そうという考えじゃなくて、甚兵衛のウチで起った事件にヒントを得たせいなのである。
 不二男がお加久の信者になったときいて、こいつはシメタと考えた。
 平作は新興宗教なぞに特に関心はもたないから、教祖だの行者なぞというものを、ただの人間、むしろウジムシと考えている。易者はお客を妄者とよぶそうだが、その易者も自身の未来が占えずシガない暮しを立てているとこは、妄者以下、ウジムシじゃないか。ウジムシの神通力なぞバカバカしくて考えることもできない。
 けれども世間にはウジムシ以下のバカが存在することも確かで、たとえばウジムシの信者になるバカがいる。こういうバカに対して、ウジムシが一応の神通力があるのも確かである。
「信者は教祖の意のままになるものだ。お加久に鼻グスリをかがせ、不二
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