良少女は大概よい魂の所有者なのだが教養が低いから堕ちると高さがなくなる。
 私の友達の十七の娘はその後結婚して良い母になつてゐる筈であるが、この娘はフランス文学者の娘で日本の古典文学に本格的な教養を持つてをり、私の原稿を読んで仮名や誤字を訂正してくれたが私が又今もつて漢字だの仮名遣ひなど杜撰《ずさん》極る知識の持主なのだから、あんまり沢山誤字があつたり仮名遣ひが間違つてゐたりして、十七の不良少女に仮名遣ひを教へて貰つて恐縮したものである。
 私は胃が弱いので、酒やビールだと必ず吐いて苦しむので、これはヂッと飲んでゐると尚いけない。少しづつ飲んで梯子酒をすると割合によい。一番よいのは汽車の食堂で、これは常に身体がゆれてゐるから、よく消化して吐くことが殆どないのである。だからダンスをやらうかと思つたが、昔のダンスホールは酒を飲ませないものだから、非常に厭味なところで、ダンスもつい覚える気持にならなかつた。それでも、どうも酒を飲んで動かないのが苦痛の種でありすぎたから、酒場の女給から教へてもらつて(四五日)ボックスといふ奴、これが又バカ/\しくて、いつそひとつ石井漠にでも弟子入してやらうかと
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