呉清源
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)呉清源《ごせいげん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)律義|名題《なだい》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ウロ/\
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私は呉清源《ごせいげん》と二度しか会ったことがない。この春、月刊読売にたのまれて、呉清源と五子で対局した。五子は元々ムリなのだが、私も大いに闘志をもやしたせいか、呉氏を攻めて、呉氏の方が私よりも長考するような場面が現れ、こう考えられては、私の勝てる筈はない。アッサリ打棄《うっちゃ》られたが、私のヘボ碁には出来すぎた碁で、黒白童子や覆面子を感心させ、呉氏もほめていたそうだ。
この時も、然し、私は驚いた。私が呉氏の大石を攻めはじめてからの彼の態度が、真剣で、その闘志や入念さ、棋院の大手合の如くであり、一匹の虫を踏みつぶすにも、虎が全力をつくすが如くである。相手が素人だというような態度はない。その道の鬼、むしろ、勝負の鬼という、一匹の虫を踏みつぶすにも、すさまじい気魄にみちたものであった。
二度目に会ったのも、読売の主催
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