、女といふものゝ身についた白々しさにウンザリしてしまつたのである。頑強に嘘をつき決して本当のことを言はない――それは不良少年でも同じことであつたけれども、不良少女の方は外面に頑強な所がまつたくなく、こつちの訊くことにはまともな返事をしようとはせず、娘の家出に就て実に美しい表現で長々とおくやみの挨拶をのべ、本当に親身になつて自分の方から相談に乗りだすといふ情のこもつた様子で、いつの間にか話を自分の身辺から遠い所へ離してしまひ、驚く程色々なことを教へてくれる。いづれも一応重大なことばかりだけれども、気がついてみると、この事件には何の関係もないことばかりだ。さうして娘達に別れると、結局どの娘の話をきいたあとでも、その娘だけが純良無垢なしほらしい女であるといふことを語つてゐるに過ぎないことが分るのである。全然他人にかゝる迷惑などは顧慮してをらず、娘の家出のことなどもてんで問題にしてゐやしない。不良少女は顔立の可愛い娘ばかりで、いづれも良家のしほらしい子女、いやむしろ普通よりも躾のいゝ娘としか思はれず、高貴なほど頭抜けて美しい娘もゐた。けれども、何分僕達は彼女達の驚くべき秘密文書をみんな読破して
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