、うゝと唸りながら、たうとう全部箱につめてしまつたのである。それのみではなかつた。すでに関さんノンビリさんの助力のないことが分りながら、更に第二回目のトラックを引受けた。さうして、之も亦、遂に、片づけてしまつたのだ。盲目の愛からか、腹いせからか。怖るべき意地ではあつた。
然しながら、之に就ても、蛇足があるのだ。あんたはん、なんとして、之が意地ですかいな。と、主婦が僕に言ふのである。慾ですわな。五千六千とつもつてみなはれ。大きうおす。それを忘れてからに、このをつさんが、やりますかいな。
ほんまに、さうや。と、親爺は酒をのむ僕を見あげて、ヒヽヽヽと笑つた。それは神々しいぐらゐ無邪気であつた。
附記 時間がなかつたので仮に古都と題しておきましたが、全然気に入りませんから、次回を載せる時は題を変へます。
[#地付き](未完)
底本:「坂口安吾全集 03」筑摩書房
1999(平成11)年3月20日初版第1刷発行
底本の親本:「現代文学 第五巻第一号」大観堂
1941(昭和16)年12月28日発行
初出:「現代文学 第五巻第一号」大観堂
1941(昭和16)年12月
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