いえ」
サルトルはニコヤカに笑みをたたえているだけである。いかなる秘計をうちあけたか、わからない。
日の暮方、サルトルは雲隠才蔵をよびだして、
「雲さんや。主人持ちは、つらいねえ。どうだい。一旗あげたいと思わないか」
「チェッ。おだてるない。お前みたいな忠勤ヅラはアイソがつきてるんだ。今さら、つきあえるかい」
「そこが主人持ちのあさましいところだよ。オヌシもポツネンと山奥の宿へおいてけぼりで、なんとなくパッとしないな」
「胸に一物あってのことよ。忠勤ヅラは見ていられねえや」
「さあ。そこだよ。どうだい、兄弟。ここんところで、石川組と天草商事を手玉にとってみようじゃないか」
「兄弟だって云やがらア。薄気味のわるい野郎じゃないか」
「アッハッハ。ノガミの浮浪者が、こんな出会いで集団強盗をくみやがるのさ。しかし、河内山《こうちやま》もこんなものだろうよ。ところが、アタシの考えは、もっと大きい」
サルトルは才蔵の耳に口をあてゝ、ボシャ/\/\とさゝやいた。
「どうだい。ちょッとシャレていると思わないかい。雲さんや」
「よせやい。箱根で雲さんなんて、雲助みたいで、よくねえや」
「このあとに
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