い」
天草次郎は車中から怒り声をたゝきつけた。
「ヘエ。まいど、アリ」
サルトルはニコヤカに見送った。
その八 サルトルと才蔵同盟のこと
「青二才に値切り倒されて、ふざけるな。貴様ア、それでいいつもりなら、オレに顔の立つようにやってみろ。顔をつぶしやがったら、そのまゝじゃアおかねえぞ」
「ヘエ。顔でざんすか。これは、どうも、いけねえな。顔はつぶれるかも知れませんねえ」
サルトルはクスリと大胆不敵な笑みをうかべて、まぶしそうに長範社長を見つめた。
「ショウバイはすべからく金銭の問題で、顔なんざ二ツ三ツつぶしておいた方が気楽なんだがなア。もうけりゃ、いゝじゃありませんか」
「よろし。その言葉を忘れるな。顔の立つだけ、もうけてこい」
「ヘエ。もうけてきやす」
サルトルはニコヤカに一礼する。自信満々たる様子。不可測の才略は長範もよく心得ているから、奴めがあゝ言うからは委せておいて不安はなかろう。内々ホッと一息。
その場には敵方の雲隠才蔵も居合わすことだから、余計なことは云わない方がよい。一同は底倉へ帰る。ひとり敵の手中に取りのこされた才蔵は、味方の奴らが恨めしく、くやしくて
前へ
次へ
全158ページ中73ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング