おけ」
「ヘエ」
才蔵は手帳をさいて地図をかいた。。
「よかろう。話がきまって、結構だ。熊蔵、契約書の用意をしろ。それから手金のことは、昨日才蔵に伝えた通りだが、残金は毎月四百五十万円ずつ、四ヵ月間で支払ってもらう」
「それはムリですよ。ねえ」
と、半平が口をひらいた。
「契約書なんて、いけませんよ。ボクらレッキとした商事会社ですけど、仕事の性質上、ボクらの商法は結局ヤミ取引きでしょう。ボクらはヤミを一つの信用として扱っていますよ。ボクらにとっては合法的なことは罪悪なんです。合法的なことは、我々の世代に於ては、卑屈で、又、卑怯者のやることですね。ボクらは合法的な卑屈さを排して、相互の人格を尊重し合うところから出発しているのです。アプレゲールなんですよ。わかるでしょう」
「止せよ。お前の屁理窟はキリがなくッて、やりきれねえ」
と、天草次郎はイラ/\と制した。
「契約書や手金なんか、止そう。最も明確簡単に商売をやろうよ。オレたち、それ以外の取引はしたことがないのだから現物が届いたら、その分だけの支払いをするのだね」
長範は、はやる胸をグッと抑えて、
「ナニ、現物引換えだと。それぐら
前へ
次へ
全158ページ中71ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング