時に買い手の目が利くと大モウケができるのさ」
「だって雲をつかむような取引きじゃアないか。バカにされたとしか思われねえや」
「キミの社長が製材所の倅なら雲をつかむような取引きはしないさ。見ていたまえ。目の利く買い手にはチャンスだよ。アタシに金があればこのチャンスは逃さない」
「ひとりぎめにチャンスたって、なんにもならねえや。露天商人はみんなそんなこと言ってらア」
サルトルはニコヤカに笑みを含んでいるばかり、弁解もしない。
「キミは何の御用で東京へ行くんだい。オレを送りとゞける役目かい」
「マア、それもあるが、アタシは社長夫人を箱根へ案内する役目さ」
クソ面白くもない。悪日の連続である。正宗菊松は寝小便をたれ流し、着物にクソをつけてうろつきまわっているという。そんなものの世話まで焼かされては堪らない。これを機会に箱根と縁を切るに越したことはないから、社長室へ挨拶に行って、
「ボクは東京へ帰ろうなんて思ってやしなかったんですが、これこれしかじかの次第で、長範の命令一下サルトルとゴリラの馬鹿力にトラックへ押し上げられちゃって、おまけにサルトルが東京までニコヤカに護衛してやんだから処置ねえ
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