じゃねえや。あのジイサン、神殿でネションベンたれて、魂をぬきあげられて帰ってくるに相違ないから、いたわってやんなよ」
 誰ひとり才蔵の味方になってくれる者がない。才蔵をのこして、一同は意気たからかにガイセンした。
 才蔵は無念でたまらない。深く恨みを結んだ。よろしい、畜生め、どいつも、こいつも、今にギョッと云わせてくれるから、と、湯につかって策戦をねった。何がさて子供の時から目から鼻へぬける男、三国志の地へ出征して、つぶさに実力をみがいてきました。魂をぬきあげられた正宗菊松をあやつって、天草商事をテンヤワンヤにしてくれようと怖しいことを考えた。

   その六 怪社長の出現と天草次郎出陣のこと

 正宗菊松はマニ教神殿に監禁されて、二日二晩すぎても戻って来ない。三日目に妙な使者が現れた。
「えゝ、始めてでござんす。天草商事の秘書のお方でござんすか」
 見たところ二十四五、雲隠才蔵と同じ年恰好であるが、白衣の使者とちがうようだ。最新型の背広に赤ネクタイ、眉目秀麗の青年であるが、なんとなくフテブテしく尋常ならぬ凄みがある。此奴《こいつ》めタダ者にはあらずと、才蔵はヌカリなく見てとった。

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