けると、ボクたち救われるんですけどね。治していたゞけますかしら」
神の使者も眉をよせたようである。けれども、正宗菊松の顔、形を見れば分ることだが、泣かんばかりに悄然とうなだれて、慙愧《ざんき》の念、身も細るほど全身に現れている。半平の奇怪な言葉に、ひとすじの偽りもないことは、明々白々《ありあり》あらわれている。すべてを観察して、神の使者は、うちうなずき、
「長年邪神について、邪念が髄に及んでいるから、正宗のカラダに様々の障碍が宿っているのに不思議はない。マニ妙光様は宇宙の全てゞあるから、この教えにもとづいて魂をミソイだならば、寝小便などは苦もなく治ってしまう。まだマニ妙光様直々のオサトシをうけるわけにはいかぬが、別室で浄めてつかわすから、正宗だけ、ついて参るがよい」
「ボクたちも浄めて下さいな。お父さんと同じようにしてもらわなくッちゃア、あとあと親孝行にサシツカエがあるんですよ。なんてッたって、たゞもう、モーローと平伏ばかりしているでしょう。別室で一人になったりなんかすると、益々あがッちゃって、目も見えず、耳もきこえなくなるんですよ。とても心配で、ほッとかれやしないよ、ねえ」
「アア
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