たきシアワセに存じあげます。御遷座の上は、ワタクシも東京におりまするから、御用の折は遠慮なく申しつけて下さいますよう。フツツカながら、犬馬の労をいといません」
「ウム。信徒に非ずとはいえ、お前の志のよいところは神意にかのうている。時々遊びにくるがよい」
「ハハッ。ありがたきシアワセに存じ上げ奉ります」
 と、サルトルは目的を達し、正宗菊松をつれだして、東京へ帰ることができた。
 一方、天草次郎によびよせられた在京の幹部連中、痩せさらばえて額面蒼白、目玉に妖光を放つ社長から神示をうけ、東京へとって返して、数台のトラックを苦面する。
 このトラックに幔幕をはり、神具はじめ家財一切つめこみ、信徒が分乗し、合唱奏楽高らかに東海道を走って、東京へのりこむ。
 天草商事へ横づけにすると、直ちに社長室を神殿にかざりなして、奏楽合唱礼拝をはじめる。
 社員一同を廊下にひれ伏させて、事業一切神の手にうつった旨を申しきかせ、社員は同時に信徒たり、下僕たる旨をも申し渡す。
 ズラリとひれ伏した社員の頭上を幣束《へいそく》が風を切って走り、ミコの鈴が駈け去り駈け寄り、合唱がねり歩く。
 三羽烏、いずれも蒼ざめ
前へ 次へ
全158ページ中147ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング