なるねえ。ムリな取引をお願いしているのだから、サルトル君の言葉には従わなければならないよ」
 外へでると、サルトルは一同に向い、
「では、皆さんは私の車で、御案内します。お嬢さんは、皆さん方のお車で、タチバナ屋へ」
 サルトルの言葉通りに、別れて車にのる。半平はツル子を車中へ送りこんで、
「心配することはないよ。君は又、ソッとここへ戻っていたまえ。分ったね」
 こう言いふくめて、安心してサルトルの車にのる。
 さすがの半平も、ツル子がサルトルと盟約をむすんだ同志とは気がつかない。
 自動車は早川の渓流に沿って、箱根の山をのぼる。
 いよいよ、底倉。当然の順路。べつに怪しむ者もない。
 自動車は道を走ると思いのほか、ギイと曲って、立派な門内へはいってしまった。
 門の左右にたくさんの人物が隠れていて、自動車が門内へはいると、サッと門を閉じてしまう。ツル子の車は、閉めだしをくって、中へは、はいることができない。
 自動車は玄関前へスルスルととまった。
 玄関かちサッと現れた一群の人物、門をしめて駈けつけた一群の人物、十重二十重に車をとりかこむ。みんな白衣をきている。
 これぞ、マニ教神殿!
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