菊松の手ぶりのどこに魔力がこもっているのか、サルトルには見当がつかない。菊松もサルトルの存在などは問題にしていない様子である。サルトルは霊界に無縁の俗物というわけかも知れない。
「エエ、失礼でざんすが、天草商事の正宗菊松常務でざんすか」
サルトルは小腰をかゞめて挨拶した。神様の両眼がギロリと青い炎をふいて光った。
「天草商事だと?」
「ハッ。イヤ。アタクシは天草商事の者ではございません。石川組のサルトル・サスケと申します青二才で。お見知りおきの程、ねがいあげます」
「キサマ、なんの用できたか」
「ハッ。社長の命によりましてな。実は、御存知かと思いますが、石川組の社長はマニ教の大の信者でありまして、当神殿に参籠のみぎりコチラサンをお見かけ致したと申しております。それでまア、正宗常務ともあろう御方がカンキンのウキメを見ておられるのはお気の毒であるから、アタクシに命じまして、アタクシは目下、天草商事と掛け合いまして、コチラサンの救出運動につとめております。なにがさて、マニ教から百万円の身代金を要求いたしておりますので、思うようにはかどりませず、長らく御不自由をおかけ致しまして、まことに申
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