たからサルトルもおどろいた。
「コウーラッ! キサマの魂をぬいたぞウ」
 どうやら、たしかに魂をぬきあげたらしい。そういう手ぶりである。そして、ぬきあげた魂を、ためつすかしつ、見きわめている様子である。
「ベエーッ」
 正宗菊松はとびのいて、ツバをはいた。そして魂を投《ほう》りだしてしまった。
「キサマの魂は腐っとる。ウジムシがたかっとるぞ。ベッ、ベッ。臭いのなんの」
 よほど悪臭の強い魂らしい。正宗神様、イマイマしがって、鼻口をゆがめて、目をつぶっている。
 魂を投げすてられたから、白衣の男の苦しむのなんの。
「アッ、アッ、アッ」
 焦熱地獄の苦しみ。エビのようにヒン曲ったり、逆立ちして宙返りをうったり、脇腹をかきむしる。魂というものは脇腹にあるのかも知れない。
 ずいぶん意地の悪い神様で、のたうち廻って苦悶しているのに、鼻をまげて臭がっているばかり、一向に魂を返してくれないのである。
 ようやく気がついた様子で、
「もうよい。かえれ。また、ぬいてやる」
 うるさそうに、こう言って、追い返してしまった。絶対の王者とはこのことであろう。白衣の男は這いながら、呻きつゞけて、消え去った。

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