も迷惑である」
「ハハア。例の寝小便ですな」
「イヤ、そのような生易しいものではない。正宗が神の術を使いよるので、こまる」
「神の術と申しますと?」
「魂を抜きよるので困っておる」
「なるほど。魂がモヌケのカラというわけですな。抜いてやりたくても、アトがないというわけで。なるほど、神様もお困りでしょう」
「そうではないぞ。正宗が人の魂をぬきよるのじゃ。若い者も、ミコも、みんな抜かれよる。よう抜かれるので、気味がわるい。参籠の信徒も抜かれる。神様の魂もぬいてくれるぞと喚きおってダダをこねよるから、これには閉口いたしておる」
 サルトルがおどろいたのはムリがない。
 内務大臣は眉間に憂いをたたえて、心の晴れない様子である。
「奇妙なことがあるものですな。神様の術を盗みましたかな」
「あるいは神様の分身であるかも知れぬが、荒ぶる神で、和魂《ニギミタマ》というものが生じていないから、扱いに困却いたしておる」
「和魂を生じますと、ノレンをわけるというわけで」
「それはその時のことであるが、信徒の病気もよう治しよるので、ウチのミコも若い者も信徒も、一様に正宗を信仰しよるので困っておる」
「病気も治
前へ 次へ
全158ページ中109ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング