関係があるだけだと思ひこんでゐたのだ。
「あなたは何とまア気違ひですか。村山さんからはもう正式に使者の方が何度も足を運んで下さるといふのに。京二郎さんなどゝいふ粗暴な礼儀知らずの低級なろくでなしは、御三方に頭をわられて半殺しになるといゝ」
 トキ子はうなだれてゐたが、シッカリした顔付で、返事をしなかつた。
「あなたは、まさか京二郎さんが好きなわけではないでせう。あの人はあなたを手ゴメにしたのでせう。それは私に分ります。なぜそのとき私に打ちあけて下さいませんか」
 トキ子は答へなかつた。
「皆さんが戻つていらしたら、あなたは村山さんにお詫びをしなければいけません。できますか。それはできるでせう。しなければならないのです。然し、許して下さらなければ、あなたはどうなさるつもりですか」
 長い沈黙のあとで、たまりかねて信子がつぶやいた。
「今ごろはあのろくでなしは血まみれにヒックリかへつてゐることでせう」
「一人に三人ですものね。でも、妙信さんはオセッカイではないかしら。あの方の知らないことだわ」
 と、秋子が呟いた。
「正義ですもの、それが当然ですよ。何がオセッカイですか」
 そこへ四人が荒
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