んだ。こつちは商売でやつてるんだぜ。天妙教の出店の酒場ぢやないんだから、とつとゝお帰り」
「アレマア、旦那はセッカチだわねえ、この子にや芸があるんですよ。大繁昌疑ひなしの芸だわよ。ふんとに悲しいことだねえ。よその男にや喜ばれるが、一人の亭主にや厭がられる、なさけないと云つたら、ありやしないね。何も、あなた、私やわが子の恥をさらしたくはないけどね、天妙大神のオボシメシなら、是非もないわよ。こちらのお店にや天妙大神の御意が及んでゐるのだから、ふざけちやいけませんやね。うちの子のギセイがあるんだよ。悲しいギセイなんだよ。こつちはイケニエになつてるんだ。罰当りを言つちやア、神罰たちどころに及ぶから」
「僕のところぢやあんた方のゴムリを願つちやゐないんだから、天妙様の御指図は方角が違つてゐるのだらう。この節のお客は特別伝染病をこはがるタチだから、とつとと帰つておくれ。石炭酸をブッかけるぜ」
「アレまア旦那、私や五色の色に光る目玉は始めてだよ。ふんとに旦那は御存知ないことだからねえ、とんだ失礼申しましたよ。それぢやア旦那、お気に召さなきや酒代は私が持ちますから、カストリを一升ほどこの子に飲まして下
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