の目を半眼に、口をだらしなく開けて、退屈しきつたやうなネボケ顔をしてチョコナンと膝をくづして坐つてゐる。
「コンチハ。又、来たよ。神様はお化粧しちやいけないのかな」
「アハハ」
神様はなぜだか、だらしなく笑つた。馬が笑つたみたいな音だつた。
「今曰くることが分つてゐた」
「分るだらうさ。来てゐるからな」
「アハハ」
「だいぶ神様もイタについたね」
「人を恨むでない」
「アッハッハ」
「もう、よい。今日は、よいよ」
養神様は目をとぢた。目をとぢると、それだけでヒルネの顔になる。
最上清人はポケットからタバコをだして火をつけた。タバコをパク/\やつてるうちに、ひどくイライラしてきた。みんな殺してやりたいやうな殺気があふれて、やにはに逆上してしまつた。
いきなり養神様の手を掴んで、タバコの火をギュッと押しつけた。
養神様はブルブルふるへたやうだつたが、抑へられた手をふりほどこうとしない。アッといふ声はもれたが、悲鳴はあげなかつた。存分に火を押しつけて、顔をあげて、養神様の顔を見ると、最上清人は、水をあびたやうにゾッとした。
養神様は歯をくひしばつてゐるのである。出ッ歯だから、猿が
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