ないかね」
「フム、なるほど、これは最上先生、大変手相がよくなつてをりますよ。ちよッと、こゝをごらんなさい。こゝのところ、これね。先日はこの枝がありません。たゞ延びきつてゐたのです。まだ、その外にも、色々変つてきたところがあります。そちらの手を拝借。フム、やつぱり、さうです。然し、この前はヒドかつたですね。あれはあなた、ルンペン以下、まつたく僕もそんな手相があるなんて、ルンペン以下とは何ですかネ。今日はあなた、一段上つてをりますよ。今日の手相が、まあ普通のいはゆるルンペンの相ですね。先日は根のないところに大枝をはつて危いところでしたが、この通り、枝が切れて、つまりあなたは安定してをります」
「つまり、僕の本性はルンペンといふわけだネ」
「ひがんではいけませんよ。ルンペンの本性といふ固定したものはありません。手相は動くものですが、それは運命が動く、運命は又、性格であり、本性です。この手相なら養神様に見放されはしませんから、今日はゆつくり対座して、お話を承つてごらんなさい。では御案内いたしませう」
養神様は相変らず額に乱れた髪の毛をたらして、髪全体シラミの巣のやうにモヂャ/\、ヤブニラミ
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