と山積みの充実した量感を思ひだす。すると急に、その量感になぐられたやうにパンクして、恐るべき真空状態に落ちこむのである。
ピストルがあるなら、いきなり、街角へとびだして乱射して有象無象をメチャ/\にバタバタ将棋倒しにしてやりたい。
結局、歩いてゐるに限る。
すると、養神道施術本部の前へきたから、急に中へすひこまれた。
上つて、いきなり次の間へ行かうとすると、
「モシモシ、順番ですよ。あなたは、どなたですか。御用の方なら取次の私に仰有い」
そんな言葉には耳もかさず、次の間へはいる。仙境の人は今しも一人の年増の女に養神道の奥儀をといてゐるところだ。
「やつてるネ」
「あゝ、いらつしやい。ちよッと、そこへ坐つてゐらして下さい。今、すぐ、すみますから」
「さうかい。なるほど、見物も面白いな。君のところに、お酒かビールはないかね」
「ぢやア、それでは、あなたを先にやりませう。奥さん、ちよッと、お待ちになつて下さい。最上先生、どうぞ、こちらへ」
「ハッハッハ。又、手相か。君のアツラヘムキにでてるだらうさ。どうだい、君のところぢやずいぶん溜つたらうけど、紙を廻してあげるから、出版屋でもやら
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