され、大男が五人とび降りてきて、
「やあ、ある、ある。なるほど。これつぱかしぢやない筈だ。こゝかな。ヤッ、こゝにも在る。まだ、ある筈だな。こつちかな。や、あるぞ、あるぞ」
誰一人、てんで最上清人にペコリと挨拶はおろか、目をくれた奴もゐないのである。まるでもう倉庫を自由に歩き廻るやうに、勝手に奥へのりこんで戸をガラガラあけ、お勝手で水をのんでゐる奴、遠慮なく便所で小便たれる奴、乱暴狼藉、すると次には入りみだれて仙花紙をセッセとトラックへつみはじめるから、
「もしもし、あなた方は何者ですか」
「アア、さうさう、私たちはね」
ヘルメットの鼻ヒゲはポケットから役人の肩書の名刺をだして見せて、
「こんな風な者さ。なんしろ、君、あの野郎、木田市郎といふヤミスケ先生ね、あの野郎は君、とんでもないことをやりやがるよ。この紙は動かしちやいけない物なんだ。いづれはヤミスケ先生の手に渡る品物かも知れないけれども、目下は君、いと厳重に封印された倉庫の中の預り物ぢやよ。あの野郎め、スバシコイヨ、白昼これだけの品物を堂々と運びだしやがつたからな。私は君の方の話のことは知らないよ。それはいづれ木田の野郎をとッつ
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