たりしてゐた様子にくらべて、哲学者てえのは誰よりもマヂメに打ちこんでおツキアヒをしてしまふから怖しい。つまり何だね、ロゴスだの宇宙だのと、とてもボンクラの手のとゞかないことばかり思索しながら、実は目先の現実にツヂツマを合せるだけの能しかねえのぢやないかなあ。現実の権勢に盲目的に崇拝ツイヅイなさるのは、そしてそのために宇宙のツヂツマまで合せておしまひになるといふ、哲学者ぐらゐ安直重宝な方々はゐないな。三年前までは日本的なるものゝ発見、今日ビは与太郎の発見、色々と発見なさるですよ。然し今日にして真の明日を看破して杭を打つ者が来るべき日本の王者であるといふ、たつたそれだけのことが分らねえとは。いえ、分りました、与太郎の発見これまた趣向だアね。ともかく発見が好きなんだア。けれども今在るものを発見、それは発見てえんぢやあねえな。与太郎の方は与太郎自身を発見したかも知れねえけれども、最上先生の方が発見したてえことにはならねえだらう。発見させてもらつたんだな。それも亦、発見か」
 と倉田博文、例になくオカンムリで頭から一時は湯気のたつ様子であつたが、いつまでもコダハルやうな御方ぢやない。
「いや、相
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