コンニチの特異なところが看破できないのかなア。失礼ながら、現在のあなたなんぞは、たゞのアブクにすぎないよ。最上先生ともあらうお方が、なにがしのお金を握るとかうまでヤキが廻るものかな。それはあなた、マグレ当りにしろ、大金をもうけることは、ともかく偉大なる行跡ですとも。然し、ふざけちやいけませんよ。要するにマグレ当りといふものはマグレ当りさ、何もあなたが時代の赴くところを看破した眼力によるところはないぢやないか。こんな時代ぢや、落語の与太郎がもうけますよ。満員列車にのしこんでお米を担いでくりや、重役の月給の何倍ぐらゐもうかる仕組みにできてる、力づくだね、芸のねえ時世があるものだ。失礼ながら最上先生裏口営業の荒かせぎは与太郎の力業と異るところはないだらうな。与太郎の荒かせぎ、そんなものは時代ぢやないです。たゞ一場のナンセンス。今を時代とよぶならば、たゞナンセンスの時代、それ以外に裏も表もありやしないよ。戦争中は哲学界の御歴々が「日本的」なんとかだなんて、ナンセンスのおツキアヒを御当人はシンからマヂメにやつてゐたけど、軍需会社の重役や陸軍大将でも腹の底ではフキだしたいのを噛み殺して拍車を鳴らし
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