コだけれど、坐つてゐれば分らないやうなものだが、坐つてゐてもビッコのやうな坐り方で、ヤブニラミだけれど、これも目を閉ぢてゐるから分らないやうなものだが、目を閉ぢてゐても両の目の大きさが違ひ、一つは一の字、一つはへの字の形をしてゐる。獅子鼻の下に、出ッ歯の口をあけて、その歯の汚らしいこと。神様になつても、髪の毛をモヂャ/\たらしてゐる。深刻めいたところが全然なく、無智無能、たゞポカンと目を閉ぢてゐるだけで、二分ぐらゐで、目をとぢたまゝ、
「いやになつちやうね」
と、すこし、首をふつた。
「いやになつちやうね」
又、しばらくして、
「いやになつちやうよ」
「何が?」
「バカは死なゝきや治らないよ。お前はバカだらう」
「さうかも知れないね」
「お前はもう、いゝ。お下り。ムダだよ」
「何がムダなんだい」
「バカは仕方がないよ」
「バカか。バカがお前さんよりもお金をもうけてゐるか」
「女に飢えてるよ。アハヽ。いけすかないバカだ。助平バカ」
「お前も男に飢えてるだらう」
最上清人は立上つて、ノッソリ伺ひの間へ戻つてくる。別のお客と対座してゐた仙境の人が、最上を目でまねいて、
「あなた、ちよ
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