サービスしたり、アブレた時の無料宿泊にも応じ、ゆくゆくはパンパン・クラブの如きものを作つて特別の会員相手にイカサマぬきのルーレットだの、ダンスホールとバスルームづきの大ホテルなどを建設しようといふ、相談相手はパンパン姐御の吹雪のお静といふ睨みのきいた淑女であつた。
「私たちにいくらかづゝ利益がありや、どうせ私たちだもの、契約にのつてあげるわ。その代り、あんまり色気をださないでね。こつちはショウバイだから、ショウバイぬきの色気といふのは止しませうよ」
吹雪の姐御は単純明快であつた。二十七、妖艶な麗人で、旦那も情夫も、定まる男といふものを持たない。万端色気をショーバイだけで押切り通してきたところに、姐御の貫禄があるのである。マーケットの親分代理といふやうな立派なアンチャンが焼跡へつれこんでピストルで脅迫してもダメ、くんづほぐれつの大格闘に服もシュミーズも破れてハダカになつても反撃ミヂンも衰へず、お金には買はれてやるよ、あんたに限つて洋服代をちようだいするから。アンチャンは洋服代の苦面《くめん》がつかず、いまだに目的を達してゐない。手下のパンパンが十七人、十八九から二十二三まで、たいがい女
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