読んだヘプバーン批評のうち、最も的に当っているように思ったのは日比谷映画劇場の報告だ。それによると、ヘプバーンは少女歌劇の男役の人気だというのである。観客の多くが少女歌劇の愛好者層であったと報じられている。
「ローマの休日」の筋そのものがそっくりタカラヅカではないか。女王さまが平民の娘になりすまして催眠薬でフラフラしながら男の部屋で「着物ぬがせてえ」「もう、さがってよろしい」なぞと言う。見物の娘サン若奥サン方はドッとドヨメキを起して大よろこびであるし、老人の私はやや情なくなって孤独を感じる。
 どうやら西洋にもタカラヅカ時代がきたらしい。敗戦国の文化が戦勝国を征服するという先例は少なくないが日本少女歌劇はあちらで成功する可能性はあるようだ。

          ★

 私はヘプバーンは好きではないが、マリリン・モンローは大好きである。モンローウォークという歩き方を取去ると残るものは清潔なあどけなさで、モンローぐらい不潔感の感じられない女優はめッたにないように思う。
 モンローウォークというもので人の世の怪しさ醜さの底をついているから、その残りのあどけなさ無邪気さが安定していて、危ッか
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