にすぎないのである。
工員ゴルフと別に、足利ゴルフ会というだんなの会もここにあって、だんなはだんなで時々ゴルフ大会をやる。中には正式のレッスンをうけた正しいゴルファーもいるけれども、大会にでてくる人々の多くはここでたたきあげただんなであるから、ものすごい。
「ワー、タマが上へあがったね」
とほめられているだんなもいる。もちろんゴルフのエチケットなぞここでは無意味なばかりか、スコアの勘定も無意味である。なんべんカラ振りしても、そんなのは勘定にいれないし、打った数も一コースにつき二つ三つごまかすのは商業上の道徳と同じように公然と行われているのである。だから田舎のだんなゴルフ大会にはでるものではない。腹が立つばかりである。しかし、大会にさえでなければ腹の立つこともなく、工員ゴルフもだんなゴルフも味わい豊かでよろしいものだ。私のゴルフはへたで有名な方であるが、ここでだけは
「さすがに習ったゴルフだね」
とほめられることが多い。
桐生における私のゴルフの相棒は書上左衛門という私の家主に当る人である。自宅の裏庭にインドアの練習場をつくって二十数年もゴルフ一つに凝りに凝っている人だ。私はこの
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